『この街より』



 高校を卒業して十年以上が経ったこの夏、地元で同窓会が開かれる。
 二十歳のときの同窓会も、その後にあった同窓会も当麻は出席しなかった。イギリスに留学し、そのままそこで暮らしていたのでなかなか日本に戻れなかった。今回はうまい具合に日本に戻る時期に開かれる。懐かしさに出席の返事を送った。
 だが、返事を出してから急に不安になる。
 年月はひとを変化させる。みんなおれのことを覚えているだろうか。
 それは、十四歳のあのとき出会った仲間たちにもいえることだ。
 仲違いをしているわけではない。いまでも頻繁に連絡をとりあっている。一方で、年賀状を送りあうだけの間柄になってしまった者もいた。日本とイギリスという距離がそうさせてしまったのかもしれないし、違うのかもしれない。
 結婚した者もいれば、独り者もいる。
 不思議な気持ちだった。
 ともに戦い友情を深め合った彼らに会いたいと無性に思った。
 みんな、どうしているだろう。繋がりが途絶えたわけでもないのに、仲間たちの近況も判っているのに、会いたいと強く思った。
 手紙やメールなどでは、やはり限界がある。
 同窓会が終わったら、彼らと久しぶりに会ってみよう。いや、日本に帰ったらすぐに会いに行こう。
 ソファに身体を沈めてぼんやり思いにふけるそんな当麻を、同居人は優しい眼差しで見守っていた。



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