ぽかぽかと暖かな日。
抜けるような青空ではないが、日差しは眩しく風もやわらかだった。
「冬樹殿、これは何を並んでいるのでありますか?」
テレビを観ていたケロロがソファに座る冬樹にたずねた。雑誌から目を上げ、冬樹はニュース映像に「ああ」と言う。
「GWだからね。みんな帰省したり旅行したりで、道路が渋滞してるんだよ」
「冬樹殿はどこにも行かないでありますか?」
「ウチはママが不規則な仕事だから、そういうことしたことないなあ。それに混むって判ってるしね」
そう言って、冬樹は雑誌に目を落とした。そんな冬樹を、ケロロは言葉もなく見つめていた。
「GWに遊びに行こう! 作戦だぁぁ !?」
ケロロ小隊伍長、ギロロの声が地下基地に響く。
突然の召集命令に集ったケロロ小隊隊員たちの顔は、ギロロの呆れた声とは裏腹に、楽しげなものになった。
「軍曹さん軍曹さん、遊びに行くってどこにですかァ?」
「ただ遊びに行くのではないぞ、冬樹殿とママ殿に楽しんでもらうのが大事なのだ」
「夏美は行かないのか」
ギロロはそれとなく訊く。
「夏美殿は〜、ま〜しょうがないから連れてってやるよ〜、ってカンジ?」
肩をすくめるケロロだが、連れて行かないとあとが怖ろしいから、ということはみんなにばればれである。
「で。作戦ってのはドコが作戦なんだ?」
単刀直入にクルル。よくぞ訊いてくれたと、ケロロは胸を張る。
「まずみんなでどっか山奥の温泉にでも行って、楽しくどんちゃん遊ぶ。みんながそこで遊んでいる間にポコペン侵略を進めるのでありま〜す―――!」
……虚しいくらいに、ケロロの語尾が基地に響いた。
「な? どうしたでありますか、その沈黙は」
「クックックー。確かその作戦は、年末年始遊びに行こう! 作戦や、お盆だよ遊ぼうぜ! 作戦と同じ内容だな。加えてみごとに全部失敗していたなー、クックックー」
「えぇっ !?」
あごが落ちたケロロ。思い返してみると、そういえばー、そんなこともー、あったようなー、あったようなー……。
「えっえっ、じゃああ、温泉でまったりはできないっての?」
「まったりどころか、大渋滞に巻き込まれて現地にたどり着けなかったろうが」
「だ、だいじゅうたい??」
ケロロはさっき見た渋滞の映像と、自分が体験した車の中から見た渋滞の光景を、頭の中で照らし合わせた。高速道路を埋めつくす車の群れ。フロントウィンドウとリアウィンドウごしに見えた、果てしなくつながっている車の列。
―――両者はぴたりと一致した。
「えぇぇぇ〜!!!!」
「バカか……」
ケロロの作戦に思わず乗ろうとした自分が情けなかったのか、ギロロは吐き捨てる。
「クックックー。ま、そういうことだ、諦めろ」
「えー、遊びにいけないのー? なぁんだ、つまんない〜」
命令もなく、勝手にちらばる隊員たち。
「え、あの、まって……」
ケロロの静止も虚しく、地下基地にはケロロひとりだけになってしまった。
その夜。
テレビのニュースは、相も変わらず道路の渋滞状況を知らせていた。
一緒にテレビを観ていたママに、ケロロは訊いた。
「ねえねえママ殿。どうしてGWやお盆になると、あんなにも道が混むのでありますか?」
そうねえ、と、ママはちょっと考えて言った。
「長く取れるお休みが、みんな一緒になっちゃったからね。つらい仕事から解き放たれて息抜きしたいと思っても、みんな同じ時期にそう思って動くから、ぎゅうぎゅう詰めになっちゃうのよね……」
「ママ殿は、仕事がつらいでありますか?」
「たいへんだなー、って思うときはあるわよ。ケロちゃんだってそうじゃない?」
ママに問い返され、ケロロははっとする。個性が強すぎて、はっきりいってまとまらない隊員たち。そして凶暴な夏美。
自分は愚痴ばかりなのに、ママはそんなことおくびにも出していない……。
ケロロの目が、きらりと光った。
「ママ殿!」
「な、なに、ケロちゃん突然」
「我輩、ママ殿を尊敬するであります! 我輩、せめてGW中くらい、ママ殿の役に立てることならなんだってしたいであります!」
「そ、そう? ありがと、嬉しいわ」
ママはケロロの勢いにちょっと驚きを隠せない。だが、やはりさすがは日向秋。すぐに笑顔を取り戻す。
「何をして欲しいでありますか? 肩たたきでありますか?」
「う〜ん、そうねえ、とりあえず、わたしの代わりに家のことをやってくれてる夏美をサポートしてくれると嬉しいかなあ」
「了解でありますっ!」
ぴしっと敬礼を返すケロロ。
――― GW中、ケロロが夏美にこき使われたことは言うまでもない。
そして今回も、そんな悲鳴を上げるケロロを、ひとりさびしく見つめるしかない、すっかり忘れ去られたドロロだった……。
|
|