遠雷の記憶 〜天空のエスカフローネ〜
 
    
 静かな雨が降り続いている。
 夜空を覆う雲に、遠く夜景の明かりがおぼろに映っていた。
 ひとみは目を伏せ、耳を澄ませた。
 光とともに深い響きが、暗い雲から空に流れる。
 その音に、ひとみは淡い想いを思い出す。
 雷の音は、過去に出逢ったあのひとを思い起こさせる。切ない胸の痛みとともに。
 ―――アレン・シェザール。
 どうしてだろう。こちらの世界に戻って何年も経つというのに、何故だか雷の音を聞くと、アレンのことが思い出されてならない。
 あの日、激しい雨に打たれ街をさまよっていたあのとき、同じく街をさまようアレンと出会い、引き寄せられるように唇を重ねた。いまではあの出来事は仕組まれたものと判っている。そしてかえって、アレンではなく、バァンに心惹かれていた自分を自覚をもした。
 あの日。あの雨の日。
 それなのに、どうしてなのだろう。最近雨が降ったり、雷を聞くたびに、アレンを思い出すのだ。
 ―――不思議。
 こんなにも穏やかな気持ちでアレンのことを想うなど。
 遠雷が聞こえる。
 甘く切なく、胸が震えていた。


 ごあんない目次
     *あとがき*

 前世紀に放送していた番組です。
 映画は観ていないんですが、TVでは、ひとみはヴァンと想いあっていきますよね。でも北欧系好みのわたしは、もちろんアレンさんが大好き。
 そんなわけで、こっちの世界に戻って数年した、ちょっとは大人になったひとみがアレンさんを気にしてしまうというシーン。
 アレンさんはかっこいいし声(三木眞一郎さん)もいいんだけど、子持ちだものね。
 でもでも、ああやっぱりアレンさんが一番。 
高萩ともか・作